ハゼノキ
らんまん植物,万葉集で詠まれた草木,紅葉
- 花名ハゼノキ
- 学名Toxicodendron succedaneum
- 別名ハゼ, 櫨, 櫨の木, ロウノキ, リュウキュウハゼ, wax tree, Japanese wax tree
- 原産地日本~朝鮮半島、中国、東南アジア
- 開花場所庭, 低山
- 開花期5月, 6月
- 花言葉「真心」
ハゼノキとは
ハゼノキ(櫨の木、学名:Toxicodendron succedaneum)は、日本~朝鮮半島、中国、東南アジア原産で、ウルシ科ヌルデ属ハゼノキ種の落葉高木です。ロウノキ(蝋の木)、リュウキュウハゼ(琉球櫨)、トウハゼとも呼ばれます。日本へは1591年(安土桃山天正19年)に中国から渡来し、その後、江戸時代に中国から琉球王国を経由して薩摩藩に入り、果実から木蝋を採るための栽培が本格化しました。その際に栽培されたものが一部山地に逸脱し野生化し、現在では、関東地方以西~四国、九州・沖縄、小笠原諸島の暖地の山野や丘陵地~沿海地域に分布します。
樹皮は暗灰色で多数の亀裂が入ります。葉は堅く濃緑色で長楕円形をしています。幹や葉に毛が少ない。小葉は、垂れ下がり、先端が細細く尖り葉幅は狭い。初夏に、円錐花序を伸ばし黄緑色の小花をつけます。秋に、奇数羽状複葉が美しく紅葉し、灰褐色の小さな果実を多数付けます。樹液はウルシやヤマウルシと違い塗料とはなりません。紅葉が美しいので庭木とされます。ウルシ科の植物なので、皮膚の弱い人は接触性皮膚炎に注意が必要です。
ハゼとヤマハゼ
ハゼノキ(櫨の木、黄櫨の木、学名: Toxicodendron succedaneum)とヤマハゼ(山黄櫨、学名: Toxicodendron sylvestre)は近縁種です。ハゼノキは主に蠟燭を作るため後から輸入されヤマハゼを駆逐しました。ヤマハゼはハゼノキ程には蝋燭作りに向かず、染料や弓材、寄木細工などに使われたようです。
学名の意味
属名の「Toxicodendron 」はラテン語で「毒のある木」、種小名の「succedanea」は同じくラテン語で「代用の」と言う意味です。
ハゼとヤマハゼの違い
万葉集時代の「ハジ(波自)」は、ハゼ(ハゼノキ)とされますが、このハゼと呼ばれている木はヤマハゼではないかとされます。ハゼという木の名前が、九州経由で入って来た現在のハゼ(琉球ハゼ)に置き換えられてしまい、従来のハゼはヤマハゼと呼ばれるようになりました。。 ハゼとヤマハゼの違いは葉に毛があるか無いか見分けます。ハゼノキの葉は無毛ですが、 ヤマハゼの葉には毛が生えています。ハゼノキは木蝋を作るのが目的で栽培されましたが、ヤマハゼでは蝋は作らず木材から弓矢を作ったり芯材や紅葉を煮だして鮮黄色と黒色の染料を作るの用いました。天皇の黄色がかった御衣は「黄櫨染め」と呼ばれます。
万葉集とハゼノキ(ヤマハゼ)
万葉時代の「ハジ」は、「ハゼ」とされますが、現在のヤマハゼのようです。
万葉集 第20巻 4465番歌
大伴家持が讒言により職を解任された時に一族が誇りを失わないように詠んだ歌です。いわく、大伴家がいかに由緒ある名家であるかを長歌で詠んでいますが、「ハジ」が歌の始めで出て来るまでをご紹介します(長文なので)。
作者:大伴家持
題詞:喩族歌一首
天平勝宝8年6月17日
登場する草木:ハジ(波自、万葉時代の名前)=ヤマのハゼノキ
原文
比左加多能 安麻能刀比良伎 多可知保乃 多氣尓阿毛理之 須賣呂伎能 可未能御代欲利 【波自】由美乎 多尓藝利母多之 麻可胡也乎 多婆左美蘇倍弖 於保久米能 麻須良多祁乎々 佐吉尓多弖
読み
比左加多(ひさかた、久方)能(の) 安麻(あま、天)能(の)刀(と、戸、門)比良伎(ひらき、開き) 多可知保(たかちほ、高千穂)乃(の) 多氣(たけ、岳)尓(に)阿毛理(あもり、天降り)之(し) 須賣呂伎(すめろき、皇祖)能(の) 可未(かみ、神)能(の)御代(みよ、御代)欲利(より) 波自(はじ→ハゼのこと)由美(ゆみ、弓)乎(を) 多(た、手)尓藝利(握り)母多(もた、持た)之(し) 麻(真、ま)可胡(鹿子、かご)也(矢)乎(を) 多(手、た)婆左美(ばさみ、挟み)蘇倍(そへ)弖(て) 於保(おお、大)久米(くめ)能(の) 麻須良(ますら)多祁(たけ)乎々(をを) 佐吉(さき、先)尓(に)多弖(たて、立て)
↓
久方の 天の門開き 高千穂の 岳(たけ)に天降(あも)りし 皇祖(すめろき)の 神の御代より 【波自(はじ→ハゼ)】弓を 手握り持たし 真鹿子矢を 手挟み添へて 大久米の ますらたけをを 先に立て …
意味
天の門を開いて 高千穂の 峰に天降られた 皇祖(すめろき)の 神の時代より 【ハゼ】の弓を 手に握り持って 真鹿子矢を 手に挟んだ 大久米の つわものを 先頭に立てられた。
神代の代から大伴家は天皇に仕えている名家だが、この度、讒言によって自分が失脚することになったが、大伴家の先祖代々の名跡を絶やさないよう大伴家の一族に家持さんが飛ばした激(長歌)です。
一般名:ハゼノキ(櫨の木)、学名:Toxicodendron succedaneum、シノニム酢:Rhus succedanea、別名:Japanese wax tree、wax tree、ロウノキ(蝋の木)、ハゼノキ(櫨の木)、リュウキュウハゼ(琉球櫨)、トウハゼ、ハジ(波自、万葉時代)分類名:植物界被子植物門双子葉植物綱ムクロジ目ウルシ科ヌルデ属ハゼノキ種、原産地:日本、生活型:落葉高木、樹高:8-10m、樹皮:暗灰色で多数の亀裂、雌雄異株、葉形:奇数羽状複葉、小葉数:15枚、小葉形:長楕円形で葉先が細長く伸びる、葉長:5~12 cm、葉色:緑→赤(紅葉時)葉縁:全縁、、開花期:5月〜6月、花形:円錐花序、花序長:10cm、小花色:黄緑色、花弁数:5枚、結実期:10月、果実型:核果、果実形:扁平な球形、果実径:1cm、果実色:緑→淡褐色、紅葉期:11月〜12月、用途:紅葉が美しいので庭木、盆栽、果実から木蝋、材は寄木細工などの工芸品用、モクロウ(木蝋)、和ろうそく、びんづけ、膏薬、果実は野鳥の食餌、特記:接触性皮膚炎に注意。