恋しくてなりません🐸🎍万葉集草木98.蓬
ヨモギ(蓬、Artemisia princeps)は、中央アジア原産で日本の在来種であるキク科ヨモギ属の耐寒性常緑多年草です。蓬は「菖蒲」と同様、香気が強く邪気や穢れを祓い薬効を持つ生薬とされました。春に出る若芽を摘んで入れて搗いた餅で作るのが草餅です。また、葉裏にある白毛を集めたものは灸の「モグサ」の材料となります。
ブタクサと同様、蓬の花粉は秋の花粉症の原因植物となるので、アレルギー症の人は植物に近づかないよう注意が必要です。
万葉集と蓬
万葉集には、今から1300年程前の、飛鳥時代から奈良時代にかけて130年間(629年~759年、7世紀前半~8世紀半ば)の歌が収められています。
万葉集では、ヨモギ(蓬)を「余母疑(ヨモギ)」と記載しています。
第18巻 4116番歌
久米朝臣廣縄(くめのあそんひろのり)が、天平二十年(西暦748年)に越中の年次報告のために入京(奈良)し、翌年の天平感宝元年(西暦749年)に無事帰国したことを祝って開催された酒宴の席で、大伴家持が久米朝臣に歌った歌(久米朝臣妻になり切っって詠った歌か)。
作者:大伴宿祢家持
台詞:國掾久米朝臣廣縄以天平廿年附朝集使入京 其事畢而天平感寶元年閏五月廿七日還到本任 仍長官之舘設詩酒宴樂飲 於時主人守大伴宿祢家持作歌一首
時期:天平感寶元年閏五月廿(西暦749年)5月27日
登場する草木:蓬と菖蒲(ここでは蓬を取り上げます)
原文(長歌の途中抜粋)
保止々支須 支奈久五月能 夜女具佐 余母疑可豆良伎 左加美都伎 安蘇比奈具礼止 射水河 雪消溢而 逝水能 伊夜末思尓乃未
読み
保止々支須(霍公鳥) 支奈久(来鳴く)五月能(の) 夜女具佐(菖蒲草、あやめぐさ) 余母疑(蓬)可豆良伎(髪蔓、かづらき) 左加(酒)美都伎(みづき) 安蘇比(遊び)奈具礼止(なぐれど) 射水河(射水川、いみづかは) 雪消(げ)溢(はふり)而(て) 逝(行く)水能(の) 伊夜(いや)末思(増し)尓(に)乃未(のみ)
↓
霍公鳥(ほととぎす) 来鳴く五月の 菖蒲草(あやめぐさ) 蓬(よもぎ)髪蔓(かづらき) 酒みづき 遊びなぐれど 射水川(いみづかは) 雪消(げ)溢(はふり)て 行く水の いや増しにのみ
意味
霍公鳥(ほととぎす)が 来て鳴く五月となり 菖蒲草(あやめぐさ)や 蓬(よもぎ)を縵きにして頭に飾り 酒盛りして 遊んだけれど、 射水川(いみづかは)に 雪解け水が溢れて 流れ行く様に (あなたへの恋しさが)増すばかりです。
注記
髪蔓(かづらき)とは、つる草や花、この場合は、「菖蒲」や「蓬」の葉を輪にして頭上に戴く飾りとしたもの。
菖蒲や蓬は香気が強いので穢れや邪気を祓うために使われましたが、万葉時代は酒席の場の趣向とされたようです。
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