昔に恋してる!?万葉集草木シリーズ45.ユズリハ

ユズリハ(譲り葉、学名:Daphniphyllum macropodum)とは、中国、日本原産で、ユズリハ科ユズリハ属の常緑高木です。常緑で花が目立たないので万葉集では冬の花とみなされます。春の新葉が出た後に古葉が場所を譲るように落葉する様子を、親が子を育てて子孫が代々続いていくことで縁起物とされ正月の神棚に供えられたり注連縄に付けられるとともに、花名ともされました。


万葉集で詠われたユズリハ


万葉名を「弓弦葉(ゆずるは)」といい、万葉集で以下のように詠われています。


万葉集第2巻111番歌


作者:弓削皇子 題詞:幸于吉野宮時弓削皇子贈与額田王歌
持統天皇が吉野へ行幸された時、弓削皇子(ゆげのみこ、当時20代前半、先の天皇である天智天皇の息子)が同道して、宮に残られた額田王(ぬかたのおおきみ、当時60代、天智天皇の恋人)に贈った歌


原文


古尓 戀流鳥鴨 弓絃葉乃 三井能上従 鳴濟遊久



古(いにしへ)尓(に) 戀(恋ふ)流(る)鳥鴨(かも)弓絃葉(ゆどるは)乃(の) 三井(御井)能(の)上従(より) 鳴(き)濟(渡り)遊久(行く)

古に 恋ふる鳥かも ゆづるはの 御井の上より 鳴き渡り行く



昔を 恋しく思う鳥でしょうか ユズリハが茂る 井戸の上より 鳴き渡って行きましたよ。

天智天皇の息子であった弓削皇子が、天智天皇の恋人だった額田王へ、古き良き時代を偲んで贈った歌です。今は二人とも、どちらかと言うと、不遇の人生を送っています。
この歌に対して、額田王が弓削皇子に贈った返歌もありますが、それは別の機会にご紹介しましょう。

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