アサザ
万葉集でよまれた草木, 季節:夏
- 花名アサザ
- 学名Nymphoides peltata
- 別名ハナジュンサイ, Water fringe, 浅沙
- 原産地ユーラシア大陸や朝鮮半島、中国、日本
- 開花場所川・池
- 開花期6月, 7月, 8月
- 花言葉「信頼」「しとやかな」「平静」
アサザとは
アサザ(浅沙、学名:Nymphoides peltata)とは、ユーラシア大陸や朝鮮半島、中国、日本原産でミツガシワ科アサザ属の浮葉性多年草の水草です。
日本では北海道から九州の湖沼や池の浅場に群生します。浅い水底で、根茎の節から髭根を多数出し定着し横に拡張します。草丈は5-20cmです。葉は濃緑色で光沢があり、直径5〜8cmの、円形状ハート形で、葉縁にフリルがあります。
初夏から晩夏に、池や沼で水面上に伸ばした花茎先に、同じナス目の「キュウリ(胡瓜、学名:Cucumis sativus L)」の花に似た皴のある黄色い五弁花を咲かせます。花冠は5深裂しますが基部でつながる合弁花で、裂片の先に長毛が生えます。朝開花して夕方に萎む一日花です。
別名で、イヌジュンサイ(犬蓴菜)やハナジュンサイ(花蓴菜)と呼ばれます。ジュンサイほど好んで食べられませんが若葉は食用になり、主に花を観賞します。花弁の周囲にヒラヒラ(フリンジ)があることから、英名では、’water fringe’と呼ばれます。環境保全の一環として、湖沼のリンや窒素の除去による水質浄化や、湖岸植生帯の復元に役立てようという取り組みが霞ケ浦で行われています。花言葉は、「信頼」「しとやかな」「平静」です。
アサザは、近年減少しており、日本のレッドデータブックでは絶滅危惧 II類(環境庁 2000)に指定されています。
万葉集で「阿邪左(あざさ)」という名前で詠まれており、奈良時代には日本に存在した植物です。
万葉集とアサザ
万葉集でアサザが出てくるのはこれ1首だけです。1首の前半が父母(?)、公判が息子の歌という対話型の長歌です。
第13巻 3295番歌
作者:不詳
登場する草木:阿邪左(あざさ)、現在のアサザ(浅沙)
原文
打久津 三宅乃原従 常土 足迹貫 夏草乎 腰尓魚積 如何有哉 人子故曽 通簀文吾子
諾々名 母者不知 諾々名 父者不知 蜷腸 香黒髪丹 真木綿持 阿邪左結垂 日本之 黄楊乃小櫛乎 抑刺 卜細子 彼曽吾攦
読
「打(うち)久(ひさ)津(つ) 三宅乃(の)原従(ゆ) 常土(ひたつち)(に) 足迹(ふみ)貫(ぬき) 夏草乎(を) 腰尓(に)魚(な)積(づみ) 如何(いか)有哉(なるや) 人(の)子故曽(ゆゑぞ) 通(は)簀(す)文(も)吾子(あこ)」
「諾々名(うべな) 母者(は)不知(らじ) 諾々名(うべな) 父者(は)不知(らじ) 蜷(みなの)腸(わた) 香(か)黒(き)髪(かみ)丹(に) 真木綿(まゆふ)持(ち) 阿邪左(あざさ)結垂(ゆひたれ) 日本(やまと、大和)之(の) 黄楊(つげ)乃(の)小(を)櫛(ぐし)乎(を) 抑(押さへ)刺(さす) 卜(うらぐ)細子(はしこ) 彼曽(それぞ)吾(あが)攦(つま、妻)」
↓
「うちひさつ 三宅(みやけ)の原ゆ 直土に 足踏み貫き 夏草を 腰になづみ いかなるや 人の子ゆゑぞ 通はすも我子」
「うべな 母は知らじ うべな 父は知らじ 蜷の腸 香(か)黒き髪に 真木綿(まゆふ)持ち あざさ結ひ垂れ 大和の 黄楊の小櫛を 押さへ刺す うらぐはし子 それぞ我が妻」
意味
「三宅の原を 裸足で歩き 足を踏み抜き 夏草を 腰に絡ませて 一体 どんな娘さんの所に 通っているの、息子よ。」 by 父母(?)。
「ごモットもです 母上は(その娘を)ご存じあるまい ごモットも 父上も(彼女を)ご存じあるまい 黒髪に 木綿の紐で アサザを髪飾りにし 大和の 黄楊(つげ)の小櫛を 刺した とても美しい娘 それが私の妻なのですよ。」 by 息子。
奈良時代は母系家族で妻問婚(つまどいこん)だったためか、嫁の顔を息子の両親が見たこともないというのは現代の私たちからすると驚きですね。
注記
接頭語
「か」黒髪の「か」は形容詞ク活用。黒い
枕詞
「うちひさつ」は「三宅(みやけ)」を導きます。
「蜷の腸」は蜷貝の腸が黒いことから、「か黒き」を導きます。
地名
「三宅の原」は、奈良県磯城郡三宅町のこと。
一般名:アサザ(浅沙、阿佐佐)、学名:Nymphoides peltata、別名:ハナジュンサイ(花蓴菜)、イヌジュンサイ(犬蓴菜)、Water fringe(ウォーターフリンジ)、分類名:植物界被子植物真正双子葉類ナス目ミツガシワ科アサザ属、原産地:日本、生活型:浮葉性多年草の水草、草丈:5-20cm、葉質:光沢、葉色:濃緑色、葉の直径:5〜8cm、葉形:ハート形、葉縁:波状、花序形:集散花序、花開花:1日花、花色:黄~橙黄色、花径:3〜5 cm、花冠形:五弁花で基部が繋がる、萼:5裂、開花期:5月ー10月、果実型:蒴果、用途:ビオトープ、観賞用、薬用植物、若葉は食用可、蛾の食餌。