ツガ
万葉集でよまれた草木, 季節-春
- 花名ツガ
- 学名Tsuga sieboldii
- 別名トガ, Tsuga sieboldii, Tsuga, Japanese hemlock, 栂
- 原産地日本~朝鮮半島
- 開花場所植物園, 墓地・寺院, 公園
- 開花期4月, 5月
ツガとは
ツガ(栂、学名:Tsuga sieboldii)とは、日本~朝鮮半島原産で、マツ科ツガ属の常緑針葉高木です。本州の関東~四国、九州の山地の尾根などの急斜面に自生します。
樹高は、30~40 m、胴周囲は1m、樹皮は赤茶色で縦に裂けめが入ります。葉は深緑色で、葉長さ1~2 cm、葉幅0.2 cmの針状をしており、螺旋状に互生して付きます。雌雄同株です。
モミ(樅、学名:Abies firma)と似ていますが、葉先が尖らず、葉裏に白っぽい気孔腺が目立ちます。
4~5月に毬状花序を伸ばし、雄花は前年度枝の葉腋に1個の黄色い0.4cmの球形を、雌花は今年度枝の先端に1個の紫褐色の広卵形の球果を下向きに付けます。
10月に、緑色の松ぼっくりが成り、熟すと茶色になり、松毬から種子が飛び出します。
巨木になるので家庭の庭には植えず、公園樹や神社の神木やシンボルツリーに使われます。木材は赤っぽいクリーム色で、美しいので建材や楽器に使われます。樹皮からは漁網の染料となるタンニンが採れます。万葉集にも、「都我(ツガ)」という名前で出てくる古代からある植物です。
万葉集と栂
帝から宮中の宴会に招待された大伴家持がお礼用に予め作っておいた長歌です。
万葉集 第19巻 4266番歌
作者:大伴宿祢家持
題詞:為應詔儲作歌一首
天平勝宝4年
登場する草木:都我(ツガ)
原文
安之比奇能 八峯能宇倍能 都我能木能 伊也継々尓 松根能 絶事奈久 青丹余志 奈良能京師尓 万代尓 國所知等 安美知之 吾大皇乃 神奈我良 於母保之賣志弖 豊宴 見為今日者 毛能乃布能 八十伴雄能 嶋山尓 安可流橘 宇受尓指 紐解放而 千年保伎 保吉等餘毛之 恵良々々尓 仕奉乎 見之貴者
読み
安之比奇(あしひき)能(の) 八峯(峰)能(の)宇倍(上)能(の) 都我(つが、栂)能(の)木能(の) 伊(い)也(や)継々尓(に) 松(が)根能(の) 絶(ゆる)事奈久(なく) 青丹(に)余志(よし) 奈良能(の)京師尓(に) 万代尓(に) 國所知(らさん)等(と) 安美(やすみ)知(し)之(し) 吾(が)大皇(君)乃(の) 神奈(な)我(が)良(ら) 於(思)母(も)保(ほ)之(し)賣め)志(し)弖(て) 豊(の)宴 見(め)為(す)今日者(は) 毛(も)能(の)乃(の)布(う)能(の) 八十伴(の)雄(男)能(の) 嶋(島)山尓(に) 安可(赤)流(る)橘 宇受(ず)尓(に)指(さし) 紐解(き)放(さけ)而(て) 千年(ちとせ)保伎(寿き) 保(寿)吉(き)等(と)餘(よ)毛(も)之(し) 恵良(ゑら)々々(ゑら)尓(に) 仕(へ)奉(まつる)乎(を) 見(る)之(が)貴(たうと)者(さ)
↓
あしひきの 八つ峰(を)の上の 栂(つが)の木の いや継ぎ継ぎに 松が根の 絶ゆることなく 青によし 奈良の都に 万代(よろづよ)に 国知らさむと やすみしし 我が大君の 神(かむ)ながら 思ほしめして 豊の宴(あかり) 見(め)す今日は もののふの 八十伴(とも)の男(を)の 島山に赤る橘 うずに刺し 紐解き放(さ)けて 千年寿(ほ)き 寿(ほ)きとよもし ゑらゑらに 仕へまつるを 見るが貴さ
意味
峰々に生える 栂(つが)の木が 次々に茂って 松の根が絶えることがない 奈良の都に いつまでも 国をお治めになる 我が大君が 神ながら 望まれて 宮中で宴会を 催される今日は 文武百官や役人が 庭の築山に赤い橘を 冠や髪に刺して 着物の紐を解きほどいて (帝の)長寿を祝い 祝言を声高く響かせて 笑い楽しみ お仕え申し上げるのを 見るのは尊いことです。
一般名:ツガ(栂)、学名:Tsuga sieboldii、原産地:日本~朝鮮半島、分類名:植物界裸子植物マツ網マツ目マツ科ツガ属ツガ種、生活型:常緑針葉樹、樹形:直立、樹高:30~40 m、胴周囲:1m、樹皮色:赤茶色で縦に裂けめが入る、葉表:光沢、葉裏:白色の2本の気孔帯、葉色:深緑色、葉長:1~2 cm、葉幅:0.2 cm、葉形:針状、葉序:螺旋状に互生、雌雄同株、花序:毬状花序、開花期:4~5月、雄花:前年度枝の溶液に1個の花径0.4cmの黄色い球形、雌花:今年度枝の先端に紫褐色で卵形、結実期:10月、果実:褐色で広卵形の球果、果実長:2.5cm、果実幅:1~1.5cm、種子長:0.35cm、種子:翼あり、用途:樹木は公園樹、神社の御神木、シンボルツリーに、材は建材や楽器に、樹皮からは漁網の染料。