万164.お主も悪よのう 隠蓑 万葉集

カクレミノというと、なにか悪事を働いてそれを隠している陰湿なイメージがありますが、私は真っ正直な木です。濡れ衣や。

カクレミノ(隠蓑、学名:Dendropanax trifidus)とは、日本原産で、ウコギ科カクレミノ属の耐陰性常緑高木です。樹高は9~15mです。葉は緑色で葉質は厚みがありしなやかで光沢があり、葉縁は全縁で、互生して付きます。葉の形は、若木の時は広卵形で3裂し、成木になると卵形~長楕円形になります。
梅雨~夏に、黄緑色の小花を咲かせます。花後に緑色の果実が数個ずつ枝先に集合して付き、冬に黒熟します。樹液にはウルシーノールという漆と同成分の毒性があるので肌の敏感な方は触れると被れるので注意が必要です。
万葉集では「御綱葉(みつながしは)」という名前で呼ばれており、葉を折って酒器や料理を盛る皿や覆い、さらに神饌(しんせん=神様へお供えするもの)を盛る器とされました。


万葉集 第2巻 90番歌


万葉集 第2巻 90番歌では、ニワトコ(庭常)が万葉名の「山たづ」で以下のように歌われました。

  万葉集の原文
  君之行 氣長久成奴 山多豆乃 迎乎将徃 待尓者不待

この歌に添えられた「左注」に、この御綱葉(みつながしは=カクレミノ(隠蓑))の記述があります。


左注


万葉集 第2巻 90番歌 左注
登場する草木:御綱葉(みつながしは=カクレミノ(隠蓑))

左注 原文
皇后 遊行紀伊國 到熊野岬 取其處之御綱葉而還。

読み
磐姫皇后 紀伊国に遊行(ゆ)きて 熊野の岬に至り その処の御綱葉(みつながしは=カクレミノ(隠蓑))を取りて還りたまひき

意味
磐姫皇后は 紀伊国に遊行されて 熊野の岬に至って そこの御綱葉(みつながしは=カクレミノ(隠蓑))を取って お帰りになった

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