イヌビワ
万葉集でよまれた草木
- 花名イヌビワ
- 学名Ficus erecta
- 別名犬枇杷, イタビ
- 原産地日本、済州島(韓国)
- 開花場所庭, 公園
- 開花期4月, 5月
- 花言葉永遠の幸福
イヌビワとは
イヌビワ(学名:Ficus erecta 又は Ficus erecta var. erecta)は、日本と済州島(韓国)原産で、クワ科イチジク属の落葉広葉低木です。イヌビワは、別名で「イタビ」とも呼ばれます。日本では、関東以南から四国、九州、琉球半島の山地に自生します。樹高は3~5 mです。イチジク属なので、樹皮に傷をつけると乳白色の樹液が出ます。葉は薄く、葉柄があり、緑色で、楕円形をしています。葉長さは8~20cm、葉幅は4~8cm、葉縁は全縁で枝に互生して付きます。
雌雄異株です。4~5月に開花し、花は葉腋から出ますが、花嚢という隠頭花序で外には現れません。花嚢の径は1cmほどです。雄花の小さな穴からイヌビワコバチが入り込み卵を産み付けます。成長したイヌビワコバチは穴から出て他の雄花か雌花に入り込みます。雄花の場合は卵を産みますが、雌花に入ったイヌビワコバチは抜け出せなくなり、体に付いている花粉を雌蕊に付ける役割をするので、イヌビワが受精し果実ができます。9月~11月に花嚢は果嚢へと変わります。果嚢(果実)は直径1~1.3cmの球形で赤色→濃紫色に熟したら食べ頃です。味は甘みがあります。用途としては、樹木は公園樹や庭園樹に、果実は食用や薬用に、白い樹液は薬用となります。
名前の由来
和名のイヌビワとは、枇杷に似た果実が成りますが、種が多く味も美味しくないことに拠ります。種小名の 「erecta」 は「直立した」と言う意味。
白い粘液が出ることから「ちち(万葉名)」とされます。
万葉集とイヌビワ
万葉集20巻 4408番歌
作者:不詳(大伴家持が集めた防人の歌の一つ)
題詞:天平勝宝7年2月23日、兵部少輔(ひょうぶのしょうふ)大伴宿祢家持(天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)陳防人悲別之情歌一首[并短歌]
登場する草木:知々(チチ)=イヌビワかイチョウ、ここではイヌビワとします。
原文
大王乃 麻氣乃麻尓々々 嶋守尓 和我多知久礼婆 波々蘇婆能 波々能美許等波 美母乃須蘇 都美安氣可伎奈O 知々能未乃 知々能美許等波 多久頭努能 之良比氣乃宇倍由 奈美太多利 奈氣伎乃多婆久 可胡自母乃 多太比等里之C 安佐刀O乃 可奈之伎吾子 安良多麻乃 等之能乎奈我久 安比美受波 非之久安流倍之 今日太尓母 許等騰比勢武
読み
大君(おおきみ)の 任(ま)けのまにまに 島守(しまもり)に 我(わ)が立ち来(く)れば ははそ葉(ば)の 母の命(みこと)は 御(み)裳(も)の裾(すそ) 捻(つ)み上げ掻(か)き撫で ちちの実(み)の 父の命(みこと)は たくづのの 白(しら)ひげの上ゆ 涙垂(た)り 嘆きのたばく 鹿子(かこ)じもの ただひとりして 朝戸出(あさとで)の かなしき我(あ)が子 あらたまの 年の緒(お)長く 相(あい)見ずは 恋しくあるべし 今日だにも 言問(ことど)ひせむ
意味
大君(天皇)の ご任命のままに 防人として 家を出立したとき ははそ葉の 母上は着物の裾をつまんで私の頭をかき撫でられた ちちの実の 父上は 栲綱(たくづの)のような 白髭の上に 涙を流されて嘆いて言われた 「鹿の子のように たったひとりで 朝、旅立つ 愛しい我が子 長い年月 逢えなくなるのは 恋しいことだろう 今日だけでも 語り合おうではないか。
一般名:イヌビワ(犬枇杷)、学名:Ficus erecta 又は Ficus erecta var. erect、別名:イタビ、原産地:日本、済州島(韓国)、生息環境:関東以南から四国、九州、琉球半島の低地の林内、分類名:植物界被子植物真正双子葉類バラ目クワ科イチジク属、生活型:落葉広葉低木、樹高:3~5 m、樹皮:傷つけると白い樹液が出る、葉柄:有、葉柄長:2~5cm、葉色:緑色、葉形:卵状楕円形の単葉(不分裂葉)、葉長:8~20cm、葉幅:4~8cm、葉質:薄い、葉縁:全縁、葉序:互生、雌雄異株、花の出る場所:葉腋、開花期:4~5月、花序形:隠頭花序、花嚢径:0.8~1cm、果実期:9~11月、果実型:果嚢、果実径(果嚢径):1~1.3cm、果実形:球形、果実色:赤→濃紫色、果実の食用の可否:可、果嚢味:甘い、用途:樹木は公園樹や庭園樹に、果実は食用や薬用に、白い樹液は薬用に。
ショート動画「イヌビワの描き方」音声あり
色鉛筆でイヌビワを描くヒントを有紀@kagikenがショート動画「イヌビワの描き方」でご説明します。
画像をクリックすると開始します。声による説明があります。