万173.イチシは彼岸花か 万葉集

かぎけん花図鑑の万葉集シリーズは今回で173回となりました。万葉集自体には草木以外を詠んだ歌の方が多いでのですが、草木に限定すると残り僅かとなりました。最初は花の咲く時期と万葉集の歌の時期を合わせていましたが、残り少なくなった今は、花と歌の季節が合わなくなってきました。申し訳ありません。

ヒガンバナ(彼岸花、学名:Lycoris radiata)は東アジア原産でヒガンバナ科ヒガンバナ属の耐寒性多年草(鱗茎植物)です。マンジュシャゲ(曼珠沙華)とも呼ばれます。草丈は30~50 cmです。地下に球形の鱗茎があります。葉は根生葉で開花後に出します。
8月~9月(秋の彼岸頃)に花は咲くときに葉はなく、鱗茎から花茎を1本、真直ぐに長く伸ばし、その先端から散系花序を伸ばし、花火のような赤い6弁花を5〜7個輪形に咲かせます。花径は4 cm程で花弁は細長く外側に反り返ります。花後に根生葉をロゼッタ状に束生して出しますが、翌年に花が咲くときには葉は枯れています。
花が咲く時は葉が無く、葉が付く時は花が無い、交代制のような植物です。ヒガンバナ科の植物なので鱗茎に猛毒がありますが、薬用となります。生薬「石蒜(せきさん)」の原料となります。属名の「Lycoris」は花が美しいので海の女神「Lycoris」に例えられて命名されました。


万葉集とイチシ


万葉集に「イチシ」という名前で詠われています。
いちしの候補として、このヒガンバナの他、エゴノキ、イタドリ、クサイチゴ、ギシギシがあげられていますが、彼岸花が有力とされます。ヒガンバナは鮮紅色の花を咲かせます(白花もありますが)が、その他の花は白花を咲かせます。歌中にある「いちしろく」とは、はっきりとしたや、明るい、輝く、目立つ、明白なと言う意味です。

万葉集 第11巻 2480番歌
作者:不詳。柿本人麻呂歌集より
題詞:(寄物陳思)
登場する草木:イチシ(万葉集)=ヒガンバナか(?)

原文
路邊 壹師花 灼然 人皆知 我戀妻? [或本歌曰 灼然 人知尓家里 継而之念者]


道の辺の いちしの花の いちしろく 人皆知りぬ 我が恋妻 [或本歌曰 いちしろく 人知りにけり 継ぎてし思へば]

意味
道端に咲く いちし(ヒガンバナか?)の花のように いちしろく(はっきりと) 皆が知ってしまった 私の恋しい妻のことを。
ある本の歌曰く はっきりと(いちしろく) 人に知られてしまった いつも恋しい妻のことを思っていたので。

花言葉や詳しく知りたい方はこちらをご覧下さい。

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