マコモ
季語ー晩夏:真菰刈(まこもかり)
- 花名マコモ
- 学名Zizania latifolia
- 別名ハナガツミ, 真菰, Manchurian Wild Rice, Makomotake, かつみ, まこも
- 原産地中国
- 開花場所川・池, 田んぼ
- 開花期8月, 9月, 10月
マコモとは
マコモ(真菰、学名:Zizania latifolia)は、中国原産で、イネ科マコモ属の大型の宿根性多年生の水生草本です。日本への渡来は縄文時代と言われ、遺跡からマコモの種子が検出されており、万葉集では「コモ(薦)」と呼ばれています。日本では北海道〜九州の湖沼や、河川、溜池等の水辺に群生します。雌雄同株。春に伸びる匍匐枝(新芽)は土中を伸びるために先が角のように硬く尖っています。
葉は幅広で細長く、内部がウエファスのように空気層となっています。夏〜秋に、細長い茎先から伸びた円錐花序の先端に広線形で黄緑色の雌性の小穂を、その下に薄赤紫色の雄性小穂を咲かせます。夏に刈り取って(真菰刈、まこもかり)よく乾燥させてシメナワ(〆縄)や、コモ(菰)、ムシロ(筵)、スダレ(簀)を作るのに利用されます。黒穂菌が寄生して肥大化した新芽はマコモタケ(菰筍)と呼ばれ食用とされます。見た目はネギ(学名:Allium fistulosum)に似ており、味はタケノコ(筍)に似て淡白です。青い皮は硬いので使用せず、白い部分を加熱して食べます。調理例は、味噌汁の具やフライ、野菜の炊き合わせ、中華料理の炒め物などが一般的です。食用の他、葉でコモ(菰)を作ったり、黒い胞子は「真菰墨」と呼ばれお歯黒や鎌倉彫の顔料に使われます。和名は、丈夫で軽い葉を編んでコモ(菰)を作ったことが和名の由来です。
水生植物とマコモ
水辺の植物には、陸上との接触のある方から、湿生植物(土に根が生えている)、抽水植物(以下に説明)、浮葉植物(根は水底にあり茎は水中で葉は水に浮く)、沈水植物(水底に根があり植物全体が水中にある)、浮漂植物(根や茎は水底や水中に無く植物全体が水面に浮く)があります。
この内、マコモは、ヨシ(葦、学名:Phragmites australis)、ガマ(蒲、学名:Typha latifolia)、コウホネ(河骨、学名:Nuphar japonicum)などと同様、抽水植物です。この抽水植物とは、水生植物で、水底に根を張り茎下部は水中にあるが茎か葉の一部が水上を突き出ているものです。
万葉集とマコモ
万葉集では「コモ(薦)」と呼ばれ、17首程詠われています。その内の1首をご紹介します。
第16巻 3843番歌
作者:穂積朝臣(ほづみのあそみ)、穂積老人
題詞:穂積朝臣和歌一首
登場する植物:薦(コモ)=マコモ
あらすじ:先の3842番歌で平群朝臣(へぐりのあそみ)が穂積朝臣の「腋毛」をからかったので、次の3843番歌(ここ)で穂積朝臣が平群朝臣の「赤鼻」をからかい返した歌。売り言葉に買い言葉的な歌が万葉集にもあるんですね。
原文
何所曽 真朱穿岳 薦疊 平群乃阿曽我 鼻上乎穿礼
訓読
何所(何処に、いづくに)曽(ぞ) 真朱(ます)穿(掘る)岳(丘) 薦疊(こもたたみ) 平群乃(の)阿曽(あそ)我(が) 鼻(の)上乎(を)穿礼(掘れ)
↓
いづくにぞ 真朱(まそ)掘る丘 薦畳(こもたたみ) 平群(へぐり)の朝臣(あそ)が 鼻の上を掘れ
意味
何処にあるのか 朱を掘る丘は 薦畳(こもたたみ)のような 平群(へぐり)の朝臣の 鼻の上を掘れ。
注記
真朱(ます、まそ、しんしゅ):硫化水銀鉱物から取り出される濃黒色の赤色。
薦畳(こもたたみ):マコモ(薦、こも)で編んで作った畳。幾重(へ)にも重ねて編むの意で「平(へ)群」に掛かる枕詞。
一般名:マコモ(真菰)、学名:Zizania latifolia L.、分類名:植物界被子植物単子葉類イネ目イネ科マコモ属、別名:Makomotake、ハナガツミ(花勝美) 、カツミ(古名)、Manchurian Wild Rice、原産地:中国、分布:北海道〜九州までの日本、東アジア〜東南アジア、環境:湖沼、河川、溜池等の水辺、草丈:100〜250 cm、葉身長:40~90 cm 、葉幅:2~3 cm、葉:無毛、細長く幅広、花序形:円錐花序、花序長:40~60 cm、花色:黄緑色(雌花)、紫色(雄花)、雌性小穂:線状披針形で2~2.5 cm、雄性小穂:狭披針形で0.5~1 cm、雄蕊数:6、開花期:8月〜10月、マコモタケ長:30cm.マコモタケ巾:3 cm、用途:中国料理、漢方薬。